歩 幅  『LOVE×2な10のお題』より
      〜年の差ルイヒル Ver.より
 

    あのねあのね?
    セナの進さんはとっても背が高くって、
    脚だって凄んごく長くって、
    そりゃあそりゃあカッコいいお兄さんなんだよぉ?///////
    だからあのね?
    セナは小っちゃいから、いっしょに歩くときは ちょっと大変なの。
    進さんに一生懸命ついてくんだけど、
    やっぱり時々は どんどん差が出て離れちゃったりもして。
    でもねあのね? セナが“待って待ってぇ”ってお願いすると、
    ああごめんごめんって止まってくりるのぉvv
    そんなやさしい進さんが、セナは大好きですvv


      「〜〜〜〜〜〜。」
      「姉崎センセ?」
      「はっきり言ってやった方がいいぜ?
       全国作文コンクールに、これは出せないって。」






  ◇  ◇  ◇



 本年度は問題児の当たり年なのかと、某小学校では学年主任の先生が少々悩むこともおありならしいが。そんなのご当人たちは知ったこっちゃない。今日も元気に駆け回りはしゃぎ回り、好奇心が捕まえた“何故なにな〜に?”へ愛らしい額を寄せ合ったり、まだちょっと背丈が足りない何かしらへそれでも果敢に挑んでみたり。失敗したり怖かったり、転んだりして泣いちゃうこともあるけれど。明日のボクが今日のボクより、ちょっとずつ大きくなるために。毎日をしゃかりきになって過ごしてる。

  「………? あれれぇ?」

 そろそろ暦の上だけじゃあなく実感のレベルでも、秋は過ぎゆきての冬の到来をあちこちで感じることがある。ご近所の小じゃれたショッピングプラザや何やでも、都心の繁華街ほどゴージャス&ラグジュアリじゃあないが、来たるクリスマスに向けての早々としたデコレーションが居並び始めてて。とはいえ、ああいうディスプレイが、クリスマスの赤なんだか歳末大売り出しの赤なんだか見分けがつかなくなくなるのはまだちょこっと先の話の、師走に入ったばかりという頃合いのこと。
「どした?」
「ほら、あれ。」
 今日は土曜で、でも、試合もないし練習も休みとした、賊学カメレオンズの主将殿と連れ立って。近所の商店街でのお買い物だと、ほてほてと歩っていた小さな坊や。お連れのお兄さんが上背のある高校生なもんだから、余計にちょこまか小さく見えてる可憐な坊やは、日本人だのに金髪色白という、そりゃあ愛らしくも天使のような風貌をしてらして。配色だけじゃあない その造作だとて、上等な玻璃玉みたいな、透き通った金茶の瞳に、丁寧に立てたメレンゲのような肌が包むは、スルリとなめらかな線の頬やら小鼻やら。バラのお花の蕾も如やという ちょんと小さな口許は、唇の先のつんと尖ったところまで、触れずとも柔らかいのだろうことが偲ばれるよな、淡い緋色が品のいい笑みに良く映えて。特別なおしゃれをしなくともモデルさんのように似合って可愛い、均衡の取れたしなやかな肢体や四肢が、そりゃあ伸びやかにまろんでの、お元気に駆け回ってるところなぞを見るにつけ、子供は天使だという俗な言いようをついつい信じたくなってしまうほどだと…周辺の若いお母様や女性陣からは千度言われてもいるらしいが。

 “…あの年齢でもう女を誑
たぶらかしてやがんだから、末恐ろしいったら。”

 妙齢の女性からおばさんまで。非常時は別としての常日頃、味方につけとく方が得策なのだというところを、既に押さえている彼こそは、それほどの美々とした玲瓏な容姿と裏腹、そういうことを知り尽くした上で、用心に用心を重ねて振る舞っている実は小悪魔。蛭魔さんチの妖一くんという小学生であり。
「ルイ?」
 そんな“王子様”が人の話を聞いてたか?とばかり、小さな肩越しに振り仰いで来たのへと、
「ああ。」
 判っておりますよと応じて差し上げたこちらさんは、割とご近所の都立高校に通う、葉柱ルイさんという高校生で。真っ白な学ランの、丈の長さや内着の派手さから、ああそういう筋のというのが判りやすい、いかにもやんちゃな系統に収まるのだろう男子だが、どういう訳だかご縁だか、この愛らしい坊やと一緒にいること多かりしで。そんなせいとそれから、彼自身も…見かけほど威嚇的挑発的に無駄吠えするタイプの、安っぽい不良じゃあなかったので。あんなに見えても本当は悪い子じゃあないのよという風評が、只今絶賛公開中。
“放っとけよ。”
 あはは、聞こえてましたか。まま、彼らの肩書はこのくらいにして。年齢も雰囲気も、背丈ひとつ取っても、180近くと120あるか無しやというほどに、色んなところが極端なほど違う組み合わせの、なのに仲良く一緒な彼らが、その視野の中へと見つけたのが、

 「瀬那チビ。」

 小ささでは大差無いかも知れないくせに、この年頃では0.5センチ差でも大きいか、そんな尊大な呼びかけをして、ヨウイチ坊やが ぱたたっと駆け寄って行った先。何をか拗ねてか俯いている、ダウンのショートコートが似合いの小さな背中と、それと向かい合うのは…自分のお膝に手を置く大きな存在。細かい畝の立ったコーデュロイのジャケットにワークパンツという、彼にはめずらしくもざっくりとしたカジュアルな格好の、
「進がどうかしたんか?」
 こらこら、説明を遮るな。
(苦笑) 進清十郎さんという、こちらも高校生のお兄さん。スポーツ刈りよりは長いめの、ざんばらな髪は漆黒で。精悍で凛々しい作りの顔立ちは、端正だが表情豊かとは言えずの、剛にして鋭。愛想が振れないようでは、成程小さな子供には怖いだろう、恐持てする風貌・雰囲気のお人だったりもするのだが、
「〜〜〜。」
 ヨウイチくんからのお言葉へ、そうではないと言いたいか。ふりふりとかぶりを振った、小さな男の子の方はというと。自分をのぞき込むお兄さんほど黒々してはないけれど、お友達の金髪ほどには目映くもない。甘い栗色が滲んだような黒髪を、小さめの頭へふわふかとやあらかく乗っけていて。そのお顔がまた、ご機嫌斜めな今でなくとも…黒々とした瞳は潤み出すような雰囲気をたたえの。柔らかそうな小鼻や小さな口許は、ぎゅうひとかいう和菓子のお餅で作ったかのように。しっとりふかふかで、押せばどこまでも沈むような柔らかさを含んでて。そんなお顔の、やっぱり柔らかそうですべすべな頬を、心もち膨らませている彼なのは、
「…セナ。」
「やです。」
 ああやっぱり。何にか拗ねての不機嫌だからに他ならず。自分の腰あたりまでしか背丈のない相手。それが俯いてしまうと、お顔を覗き込むのはなかなかに大変なのだろに。進さんは根気良くもずっとずっと、ちょっぴりお膝をゆるめた低い姿勢で、セナくんが何か言い出すの、待っててくれていたらしく。
“どうせ、トレーニングの一環くらいにしか思ってないんだろけどさ。”
 これこれ、そんな決めつけなくとも。
(苦笑) 進さんのことをそのくらい把握出来ているのと同じくらいに、こっちのクラスメートがいかに稚いとけない子であるかも、よくよく知ってるヨウイチ坊や、
「意地悪されたんか?」
 俺はお前の味方だからなと、お友達の小さな肩を抱いてやるところなんぞは、さすが向こうっ気の強い、怖いものなしの小悪魔様。日頃は意地悪なくらい辛辣な物言いしかしないくせに、本当はセナくんやクラスの子たちのことが大好きで。こんなときには庇ってくれるし、途轍もない仕返しだって鋭意準備してくれる、至れり尽くせりの悪魔様で…いや、今はそれはともかくも。こんな小さい子に何しやがったと、尖った視線を向けた先では、
「…。」
 寡黙なラインバッカーさんが、辛抱強くも黙ってる。ヨウイチくんへの焦ったような言い訳とか、自分は何もしちゃいないと言って場を取り繕ったりとかしないのは、彼にはいつものことだったけれど。いつもを引っ張り出すのなら、
“ここまでこのチビが不貞てるのも珍しいよな。”
 こうやってヨウイチくんが先走って進を責めれば、いつもだったら逆にセナが慌てて見せて、
『違うの、進さんは何にもしてないの』
 セナが我儘言っただけ、と。そう言って庇うはずなのにね。ヨウイチ坊やの偏った仲裁には、実はそんな効用も隠されていたのだが、それも今はさておいて。
「…だって。」
 そうは見えないが実は二人掛かりで、どうしたの?と見守られていた小さな坊や。膨れたお顔をうつむけていたが、お友達が来たほうから、続いてやってくる白い学ラン姿の長身をみやり、

 「葉柱のお兄さんは、ゆっくり歩いてくれるんだ。」

 ぽつり、呟いたセナだったのへ、小悪魔様がおややと瞬きを2つ3つ。そういや、こちらの二人も自分ら同様に年と背丈が違いすぎてて。でも、
“出先で迷子になったって話は聞かねぇよな。”
 わざわざ言わないってだけか? いや、そんなこたねぇぞ。困った話も嬉しそうに喋くりまくるセナだしなぁと。思ったその端から、ああそっかと合点もいった。

 「セナちび、抱っこされての散歩は ヤなのか?」

 回りくどくしたってしょうがないこと。そうと断じてすっぱり訊けば、
「〜〜〜。///////
 おおう、何とか試験紙でもここまで染まらんぞというほど、たちまちという速度で真っ赤っ赤になってしまったおチビさんであり。
「だってっ。///////
 進さんのお顔が間近で見れるのは嬉しいけど、でもだって。進さんのお胸は暖かくって広くってやさしくて、何か話すの全部そうかそうかって聞いてくれて、でもねあのね? 大好きなお声、間近から聞こえるのがうずうず嬉しいのだけど、だけどもね?

 「どっちなんだ、結論を早く言え。」
 「みぃ〜〜〜〜。」

 惚気てんだか不満なんだか、どっちつかずの言いようへは。さしもの小悪魔様も呆れたか。恐らくはポーズだけ、叩くぞと ぐうの拳を振り上げたけれど、

 「…。」

 進さんの手が…こちらもさすがに本気じゃあなかったが、ヨウイチくんの手を捕まえた。ほら、こんなにも俊敏な男がサ、小さな恋人さんの駄々に我慢強くも付き合ってたんだぜ? お外は寒いから、お家に帰ってから聞いたげようって。有無をも言わさず、ひょいっと抱え上げることだって出来たろに。それじゃあいけないらしいと、こいつにそんなところがあったのか、ちゃんと気を回してやってサ。
“やれやれ、だよな。”
 内心で肩をすくめつつ、答えは見えてる痴話ゲンカ、食いついた自分が悪いとばかりにそれでも決着を待ってやれば。

 「あのね。セナは赤ちゃんじゃないから、抱っこしてのデートは ヤなの。」

 前にヒユ魔くんが言ってたんだよ? は?何をだ? だから、

 「どっかのおばさんが小さいわんちゃんを抱っこして散歩してるの見て。
  あれって意味あんのかなって笑ったじゃない。」
 「あ…。」

 いや、言いましたよ? でも、それとあんたたちの抱っこでデートとはちょっと違うんじゃないのかしらね? なになに、じゃあ俺のせいだってのか、お前…と、話が妙な方向へ向かいかけたそんなところへ、

 「セナ。」

 静かな声が淡と上がって。

 「子供扱いがイヤだというなら、それは謝る。」

 おおう。高校アメフト界最強の仁王様が、そんな機微まで実は気づいておられましたか。こりゃあ凄いぞ進歩だぞ、帰ったら桜庭にメールで報告してやんなきゃと。一見平静を保ちつつも、内心ではそこまでの驚愕に跳ね上がりたくてむずむずしていたヨウイチくんをさておいて、
「座敷犬のように扱いたいつもりもない。ただ、迷子にしてしまうのは忍びないし、お互いに着膨れている時期だから、手をつなぐだけでは心許なく、それで。」
 何と言っても、あのお顔だ。今から真剣勝負に参ると決めたお武家様みたいな、いかにもきりりとしたお顔で、真剣真摯に訴えかけられては、

 「進さん。」

 そんな切々とした口説き落としにあって、それ以上抵抗出来るよな、スレた坊やじゃないセナだから。てことこ、自分から歩み寄ってくと、確かに厚着になってて動きの緩慢な腕、よいしょと延ばして…大好きな人の懐ろへと抱きついて。

 「ごめんなさいです。///////

 あのねあのね、抱っこもセナ好きなの、でもね? ドラマでお姉さんたちがお兄さんたちと、お指合体させて手ぇつないでるのが羨ましかったの。なんだそんなことか、こうやるのだな。そう、これvv でも、これではますますのこと、セナが歩いていると吊るすようなことになりかねんな。そですか? うむ。

 「だったらあのね? セナんこと、抱っこしていいですvv///////







 何だかもうもう、後半は聞いてもいられなかった会話で仲直りを遂げた、年の差バカップルを。じゃあねと手を振られたの、脱力ぎみに見送ったところへ、

 「おう。結局は何だったんだ?」

 やっとご到着の葉柱のお兄さんだったりしたのへ、

 「…聞きたいか。」

 八つ当たりの捌け口、ゲット、と。忌々しい声になってた坊やから、どんな仕打ちに遭ったかを、ちょいとデフォルメして聞かされる羽目になった、カメレオンズの総長様へ、



  ……………合掌。
(苦笑)







  〜Fine〜  07.12.03.


  *えと、無粋ながらも ちょこっと補足説明を致しますと、
   こちらさんは、ルイヒルのお部屋に登場しております進さんと瀬那くんでして。
   ウチのルイヒルが基本“年の差”設定になっております関係で、
   こちらさんもまた、片やが高校生でもう片やは小学生という間柄。
   一歩間違えたら犯罪者かもで、桜庭くんが振り回されて大変…という、
   妙にフットワークのお軽い、気さくなお話となっておりますですvv
   コーナーの中では“別のお話”という格好で、
   彼らが中心になっている小噺(?)やSSなんぞもお広めしておりますし、
   番外編の平安朝ものでは、
   進さんは武神で瀬那くんの憑神様という役どころだったりもしております。
   ルイヒルには興味ないわという方も、よろしかったら覗いてみて下さいましvv
(苦笑)


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